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【感想】都市伝説解体センター

ゲーム

今年2月に発売され、各所で話題になっていた都市伝説解体センター。なんとなく自分には合わなそうな気がして今まで遊んでいなかったが、夏になっても「ネタバレを食らう前にぜひ遊んでほしい!」という口コミが止むことはなく、ずっと気になって頭の奥の方に引っかかり続けていた。
先月末くらいに、なんの拍子かふと買って遊んでみたのだが……

面白い!!!!!(この記事のネタバレ)

概要

主人公・福来(ふくらい)あざみには他人には見えない何かが見える。その相談をしに都市伝説解体センターに赴くが、ひょんなことからセンター長である廻屋 渉(めぐりや あゆむ)と共にセンターに依頼された怪異調査に協力することになる。
基本的にはSNS調査パートと、現場調査パートを繰り返して調査を進めて怪異事件の原因を解明していく。

感想(序盤までの微ネタバレあり)

まずストーリーがとにかく面白かった。正直最初はそこまで期待していわけではなかったのだが、謎を解いて話が進展していくごとに背後に存在する大きな謎が深まっていく感じは引き込まれる。また、一話ごとに都市伝説をベースに話が進む形式なのもまとまっていて分かりやすいし、各話のラストにテーマ曲が流れる演出なのもかっこいい。
そもそも、オカルトの作り上げるトリックを現実的に「解体」していくという展開が個人的にかなりツボだったので楽しめた。

SNS調査も本当にすごい。このパートを具体的に説明すると、ゲーム内のSNSの投稿を見ていき、事件に関連しそうなワードを見つけてはそのワードでさらに検索をかけて、世間ではこの事件についてどんな噂が飛び交っているのかを情報収集していくというシステムになっている。
このパートでの流れてくる架空の投稿は嫌なインターネットの再現度が異常に高い。攻撃的な反論、証拠のない偏見、冷笑、個人情報の拡散など、ほんとに「SNSってわざわざこんな投稿する人いるよな〜」というサンプルのオンパレード。すごすぎて初見で笑ってしまったし、ゲームを進める中で何度もゲーム内投稿の架空ユーザーに憤りそうになった。


ゲーム内の架空SNSの投稿。「いやこれeicoお得意の自作自演じゃん こういうのに騙されるやつおかしいだろ?」「人間は醜い」などと書いてある。
「都市伝説解体センター」©2025 墓場文庫/集英社ゲームズ Nintendo Switch版
ゲーム内の架空SNSの投稿。「まぁ因果応報だよね パパ活やってるような女なんだし。」などと書いてある。
「都市伝説解体センター」©2025 墓場文庫/集英社ゲームズ Nintendo Switch版
ゲーム内の架空SNSの投稿に対し、ジャスミンというキャラクターが「無視無視。次つぎ。」とコメントしている。
「都市伝説解体センター」©2025 墓場文庫/集英社ゲームズ Nintendo Switch版

各投稿を選択すると調査パートナーのジャスミンがコメントするのだが、スルースキルが高くて安心する。

2Dドットで描かれた美しくも恐ろしい世界も良かったし、各キャラクターも素晴らしかった。センター長・廻屋は見るからに怪しいが、裏の事情がありそうなジャスミン、何かを付け狙っているようなスーツの人、そして主人公・福来あざみまで揃いも揃ってどこか信用できない人たちが揃っていて油断ならない。

ネタバレ感想

以下はこのゲームの結末に関係する感想なので、ゲームクリア後に見てほしい

廻屋が黒幕であることが分かり、最後の大仕掛けとしてインターネットのあらゆる個人情報が白日のもとに晒される。あることないこと書きまくったり、義憤に駆られて匿名のまま他人を攻撃したりしてきた人々はアカウントと個人の結び付きだけではなく顔までリアルタイムで公開されてしまう。

これね〜、正直本当に気持ちが良かった。私も性格の悪いインターネット住人の一人に過ぎないのだろうけど、現実世界のSNSで他人の人生にわざわざ攻撃的に介入する人達を見てはやるせなさを感じる日々だったし、「他人を攻撃するのに匿名じゃずるいよな、安全圏から一方的に石投げるんじゃなくてフェアに一人の人間同士で殴り合わなきゃ、それができないなら黙んないと」とか思ったりしてたので、(やり過ぎとは言え)全員が等しく個人を暴かれて、ざまあみろ、と思った。

この「ざまあみろ」は実際、SNSにて悪者と判断された誰かを匿名で攻撃して炎上させ、精神的集団リンチに加担している人たちが感じているそれとあまり変わんないのかもしれない、とは思う。

これについては、ラストの大事件で一般人がめちゃくちゃになることに対し「ざまあみろ」と思ってしまうように、現実以上に露悪的なSNSを見せ続けたのではないかと勘繰ぐってしまう。というか廻屋は最初から間接的に兄を殺した陰湿で無責任なインターネットを嫌っていたし、それに共感する人を求めてたから、やっぱり狙った演出なのかも。架空のSNSにまでイライラしてた自分はまさにそのとき福来あざみと同じ心境だったし、自分のストレス発散で無責任に炎上させる世間が返り討ちにあい爽快感を感じた自分はまさにそのとき廻屋渉と同じだった。

それで「すげぇ展開だ〜」なんてはしゃいでたら最後、主人公・あざみとセンター長・渉が解離性同一性障害(いわゆる多重人格)の同一人物であることが分かる。これも驚いた。
だからあざみの推理中に渉のアドバイスを受けれたのか。だから渉からあざみの情報や様子が筒抜けだったのか。だから通信が繋がらない地下であざみが渉に電話できていたのか。
なにか引っかかりつつも、今はそんなことより目の前に事件が!と置いてきた伏線が一気に回収されて最高だった。

それにしても、ブラッディ・メアリーの最後で事件関係者のお父さんの背後に幽霊が出たのはマジだったのかな。


ゲームルールとしてはとても単純で、気になるところを選択すれば情報は集まるし、推理はいくつかの選択肢から選ぶだけだし、間違ってもペナルティはない。

プレイヤーの介入で物語が進むのを手軽に体験できるので、普段ゲームを遊ばない人にもおすすめしたい作品だった。