【ネタバレ感想】アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ
アバター:ファイヤー・アンド・アッシュを見てきたので簡単に感想を書く。
本作は、自然豊かな惑星パンドラの生態系およびそこに住む原住民のナヴィと、その資源を我が物にしようと侵攻する人間を描く「アバター」シリーズの第三作目。
一作目の「アバター」は、奥行きのあるデジタル3Dという当時最先端の上映形態と、肌の青い異星人の見た目で話題となって世界の歴代興行収入で1位を記録している。
今回は IMAX 3D 吹替版で鑑賞した。
まずは、その圧倒的な映像表現にまた驚かされた。
前作では海をテーマとしており、映画を見ているこちらが本当に海中にいるかのような臨場感があった。今作はその続編ということで前作同様の海のシーンも有りつつ、空から森を見下ろすショットなど宙に浮いているような奥行きや、あちらこちらで炎が揺らめいている立体感も表現されていて楽しかった。
また表現という意味では、高フレームレートで上映されているのも面白い。映画は通常24fps(毎秒24コマの画像がパラパラ動く)であるのに対し、アバターは前作から一部シーンに対し48fpsを適用している。一部というか結構全体的に適用されていて、特に動きの多いシーンでは3D映像で疲れたり酔ったりしにくいようにフレームレートを高めている。
この3Dと高フレームレートの組み合わせは、平面の映像を越えてそこに現実と似たような"空間"を作り出すことで通常の映画では味わえないレベルの実在感を体験させてくれる。だからこそ、この映画はわざわざ映画館で見る価値がある。
あと普通にCGがすごい。なにせ惑星パンドラもナヴィ族も実際には存在しないわけで、俳優の演技だけが本物であとはほとんど想像の産物ということになる。それなのに、ナヴィ族の表情はとても豊かだし、パンドラの植物や生物は実在してもおかしくないクオリティで描かれている。特に、トゥルクン(クジラのような巨大な水生生物)が海面上に並び鳴き声で会話する際に鳴き声の振動に合わせて海面に細かい波紋が現れるシーンは、その細やかさに驚かされた。
次にストーリーだが、今作は前二作と比べて特に個人、家族、ナヴィ族について深堀りされていて面白かった。
今作は初めて敵対する部族であるアッシュ族が出てくるのだが、彼らも単に悪者というわけではないのがいい。彼らは他の部族と同じくエイワ(≒自然)を信仰していたにも関わらず、自然災害である火山の噴火によって故郷を焼き尽くされる。その"エイワの裏切り"に絶望した末に、エイワへの報復である炎を中心とした攻撃的な部族へと変貌してしまった悲しい部族だ。
また、主人公一家の父・ジェイクの家族も前作で失った長男の痛みを受け入れられず、家族をこれ以上失わないように攻撃的になっている。人間が作り出した特殊な体を持つ父・ジェイク、その血を引き継ぐ次男・ロアク、長女・トゥク、特別な力を持つ養女・キリ、人間であり酸素マスク着用でなんとか一緒に生活しているスパイダー。それぞれが周りと異なる事情を抱えている。なぜ自分はこうなのだ、家族とはどこまでを指すのかといった個人や家族のアイデンティティが崩れかけ、それでもなんとか前を向こうとしている。
アッシュ族やジェイク一家の複雑な感情がどんどん膨れ上がって恨みや喪失感や報復心から破壊的になっていく過程、そしてそれを経て残るものの虚しさ、そういったものを考えさせられるのがとても興味深くて引き込まれた。
中でもスパイダーの扱いは複雑で、生きているだけでジェイク一家および周囲のナヴィ族全体にとって脅威になってしまう。それ故に、ジェイクや妻・ネイティリからいっそ殺すべきという話すら出るのが残酷すぎて恐ろしく、なんなら殺す寸前までいっていた。正直「こんなことされたらスパイダーも一生ジェイク家を恨むし、家族面してるのも嘘にならない?」と思わなくもないが、まあ極限の環境に置かれてしまった人間の気持ちなんて想像できないし、そもそもナヴィ族や100年以上未来の人間の倫理観が我々と同じとは限らないし。いずれにせよ、家族はバラバラになりかけながらもそれぞれが家族とは何かを自分で考え、そのために行動し、結果的には一つにまとまって守り合える関係になっているのが素晴らしい。
今作がさらに恐ろしいのは、パンドラという比較的平和な惑星の中に圧倒的な暴力が持ち込まれてしまったこと。人間側であるクオリッチ大佐によってアッシュ族は銃や火炎放射器を手に入れてしまい、元々銃を使用していたジェイクも子や妻に兵器を使用させてしまうことになる。ここから先は、惑星パンドラの中でも結局人間と同じような銃による戦争や内紛が可能になってしまい、エイワに繋がった自然ではない異物同士の戦いになるのではないかという不安が募り、結構悲しい気持ちになった。
4作目、5作目も予定されているようなので楽しみにしたい。(予定では4作目は2029年。遠い……)
ちょっと惜しい点として、全体的な映像の見栄えは前作と似ている部分が多い。1作目から2作目で森から海へと場所も部族もガラッと変わっていたのに対し、今作は2作目と同じく海のシーンも多くフィーチャーされる海洋生物も同じで、トゥルクンが度々登場して前作と同様に狩りにあい、海上決戦で人間側の戦艦と戦闘し、最後はジェイクとクオリッチの殴り合いが待っている。こんなシーン前作もあったな〜という既視感が所々あったのが気になった。
どうやら、元々は前作と今作は一本の映画の予定だったらしい。それが、要素を詰め込みすぎているとのことで二本に分割してできたのが前作と今作であるとのこと。私は鑑賞後に「前作見ないと面白くないだろうな」と思っていたのだが、これで辻褄が合った気がする。要は前編・後編ということなんだろう。
キャラクターもとても良かった。それぞれの自立や成長が描かれていて、どんどん感情移入してしまう。
キリに対して優しい少女というイメージを持っていたのだが、終盤で覚醒したときに「トゥルクン狩りをしている人間を全員殺して」みたいなことを言ったり、(曖昧な記憶だけど)アッシュ族の女性ボスであるヴァランに「早く消えろバカ女」みたいに脅したり、かなり攻撃的な表現を使っていてびっくりした。もっと平和的だと思っていたけど、前作と今作を通して守るために攻めねばというスタンスが強くなったのかもしれない。
新キャラクターであるアッシュ族のヴァランもとてもいいキャラクターだった。攻撃的で嫌味ったらしいが、優位に立ってるつもりで滑稽にもクオリッチに懐柔されたりちゃんと負け姿も見せたりしていて、なんか憎めないところがある。そもそも原動力はエイワへの報復心なので、結局は信仰の対立であり完全悪でないのも理由かもしれない。あと、なんかやたらと妖艶なのも面白い。あの世界に生々しい"性"が存在するとは思わなかった。
クオリッチも面白い。王道の展開として共通の敵に対応するために一緒に行動することになったり、人間だった頃の息子であるスパイダーに対し愛情を向けたり、それなのに裏切られたり、ヴァランといい関係になったりと話題に事欠かない。何より、人工的なナヴィ族の肉体に人間の魂を移植したジェイクと違い、死ぬ前の人間クオリッチの記憶を人工的肉体に移しただけなのが悲哀があっていい。実際のクオリッチは死んでいるのに、自分が死んだことを知らないコピーである"クオリッチのアバター"のアイデンティティって難しいなと思う。
他の登場キャラクターも好きなのだが、物語の中心である家族の大黒柱・ジェイクがかなり不完全なのが一番人間らしくて好きかもしれない。ジェイクの子供への接し方は傍から見てても「その態度どうなの?」と思うようなことが多いし、大事な長男を失って気が動転している妻への寄り添いもなんか足りてないし、なんかずっと惜しいし頼りきれない。でもこのもどかしさを見るのが結構好きではある。
他にも、人間側の兵器やパンドラの生物のデザインも刺激的で良かったし、部族ごとの建築物や装飾も個性が出ていて感心した。
今のところ興行成績もいいみたいだし、次回作を期待しつつ今後も楽しみたい。