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俺はメタルギアにどうなってほしいのか

ゲーム思考

「メタルギア」というゲームシリーズがある。

ステルス諜報アクションゲーム(平たく言えばスパイ・アクション)であり、1987年の発売から今なお人気が続いているコナミの看板作品の一つ。
シリーズ全体で人気があり、様々なスピンオフ作品も作られ、主人公・スネークはコナミの看板キャラクターとして多様なゲームとコラボしたりしている。

現在、このシリーズを取り巻く状況は複雑だ。

メタルギアと小島監督

メタルギアシリーズは、創始者である「小島秀夫」という人間との結び付きが非常に強い。従って、シリーズ内でも「小島秀夫作品か否か」といった基準で本編とスピンオフが分けられている。

小島秀夫。彼は初代メタルギアから一貫してゲームの企画、プロデュース、ディレクション、ゲームデザイン、キャラクター設定、キャスティング、脚本などほぼ全てに関わり、作品の軸を作り続けてきた。それ故、自らを「監督」と称しており、対外的にも「小島監督」と呼ばれている。

コナミ社内のメタルギア開発を行う部署は「小島プロダクション」と呼ばれ、さながら独立スタジオのような扱いで他の部署とは一線を画していた。あくまでいちファンの目線だが、コナミ以外の会社も含めたゲーム業界の社内チームの中でも知名度やブランド力はトップクラスだったように思う。

そして、作品の販売に伴うイベントやインタビューも小島監督自らが対応し、ブログやラジオや本での発信も積極的に活用した結果、メタルギア=小島秀夫というイメージはどんどん強くなっていった


そのように強烈に作品とクリエイターを結びつけた結果として多くの熱狂的なファンを生み出した反面、「小島監督でなければメタルギアではない」という考えを持つ人も無視できないほどに増えた

もちろんこのゲームシリーズは小島監督の色がこれでもかというほど反映されているので、小島監督抜きでメタルギアを語ることができないのは同意する。

しかし、ファンの心理がどうであれ形式上は「コナミという会社の社員が会社の予算や機材や人を使って出来上がった製品」であり、作品の性質はともあれ作品の権利はすべてコナミに帰属する。つまり法的にはメタルギアはコナミの作品であるはず。

そうは言っても「小島監督が作ったメタルギア。厳密にはコナミ製」という構図は歪みを生み、シリーズを崩壊へと導いた。

コナミと小島監督の対立構造

2015年、メタルギアソリッド5発売を前に、コナミとその一部署である小島プロダクションとの関係に不穏な空気が流れ始めた。

コナミの体制変更により、特に正式な発表もなく突如として小島プロダクションが解散。小島監督本人も Twitter での発信を一切しなくなった。小島プロダクションが開発を進めていると発表されていたサイレントヒルの新作は中止となり、そのティザーゲームである「P.T.」は配信停止。

そして小島監督がコナミを退社するという報道が流れたり、コナミが小島プロダクションに妨害を加え幽閉しているという噂が出始めたりして、メタルギアソリッド5や将来のメタルギアシリーズへの不安がSNSを中心に一気に高まった

その頃、コナミの社長インタビューでこれからはモバイルアプリに注力する旨の発言をしたことからコナミは家庭用ゲームを切り捨てると解釈された。先述の小島プロダクション解散とも結びつけられ、最終的に「コナミは小島監督を追い出し歴史あるメタルギアシリーズを無下にした」という言説が定着するに至った

その結果、メタルギア=小島監督のファンが一気に強烈なコナミのアンチとなりその憤りが世界中に広まった。コナミと小島監督は対立構造に置かれ「コナミはメタルギアシリーズの新作を作るな」「メタルギアシリーズを小島監督に返せ」という声が出続けることとなる。


その後、小島監督は独立して新たに「コジマプロダクション」を設立し新たなゲームの開発を発表。

一方のコナミはメタルギアシリーズの新作として「メタルギアサヴァイブ」の制作を発表した。

ただでさえコナミがメタルギアを作ることへの反発が強い時期だった中、メタルギアサヴァイブのコンセプトが「異世界に送られた兵士が少ない資源を集め、襲い来るクリーチャーを銃や弓で倒しながら基地を防衛するハクスラ」というこれまでのシリーズとはまったく別のゲーム性や世界設定を持ったものであったため、発表時点から恐ろしいほどに炎上していたことを覚えている。

ゾンビのような見た目のクリーチャーが出てくること、シリーズの主人公であるスネークではなくモブキャラが主役であること、メタルギアソリッド5のデータを流用している部分が多いことから「こんなのはメタルギアではない」「手抜きのゲームだ」という意見がとめどなく投稿されていた。

これは推測だが、きっとシリーズの主である小島監督抜きに正統続編を作ることの反発を避ける形であえて全く別物にしたのではないかと思う。

また、小島監督もイベントにおいて自身に投げられた「メタルギアサヴァイブは小島監督のアイデアですか?」という無粋な質問に対し、自身のメタルギアの理念とは異なるという旨を回答した上で「ゾンビなんか出るわけないじゃないですか」と一蹴することで会場を盛り上げていた。

(厳密にはメタルギアサヴァイブに出ているのはゾンビではなく、あれを広くゾンビとするならメタルギアにもゾンビは出てくる(あと不死の吸血鬼とか幽霊とか)わけで、この発言によってユーザーの「そうだそうだ、あれはメタルギアの偽物だ」というような思いを強くしたことは、過去の複雑な関係がどうであれ形式上は他社が制作しているゲームのネガキャンをしたことに他ならないので、個人的にはあんまり好ましく思ってない。)

発売後のゲーム自体の評価もあまり芳しくなく「やはりコナミにメタルギアは作れない」「メタルギアを小島監督に渡せ」という声はさらに高まる。

かくしてメタルギアシリーズは事実上の終了を迎えたと考えられるようになった。

メタルギアの再興に向けて

メタルギアの今後に暗雲が立ち込めたまま5年が経った2023年。過去の作品を現行機で遊べるようにした「メタルギア マスターコレクション」が発表された。

PlayStation2までのハードで発売された作品は過去にHDリマスター版が作られていたのだが、その対応ハードすら古くなってしまったため最新のハードで遊べるようにさらに移植を行ったゲームであり、初めてNintendoハードやPCでもメタルギアが遊べるようになった。Vol.1 では初代メタルギアからメタルギアソリッド3までを移植し、これまでメタルギアシリーズを遊んだことのないユーザーにも広がったことで再びメタルギアシリーズが盛り上がりを見せた

2025年にはメタルギアソリッド3を現行機向けにリメイクした「メタルギアソリッドΔ(デルタ)」が発売され、2026年8月には「メタルギア マスターコレクション Vol.2」の発売も予定されている。

これまでのリマスターやリメイクはそれなりの評価ではあったものの、メタルギアサヴァイブのときの大炎上に比べればかなり受け入れられているように思う。これは、あくまでリマスターやリメイクの元になった作品が小島秀夫監督作品であったからでもあるが、一方でコナミの「メタルギアを続けたい」という思いとユーザーの「メタルギアが続いてほしい」という気持ちが一致した結果でもあるのではないかと考えている。

俺はメタルギアにどうなってほしいのか

メタルギアシリーズが今後も続いてほしい。それは、過去の名作が語り継がれるということだけではなく、新たな展開を迎えてほしいということでもある。

メタルギアは最新のナンバリング作品ですら10年以上前であり、過去作はレトロゲームとして面白いものの現代のゲームと比べると不親切で、現代向けリメイクと謳われていたメタルギアソリッドΔですら古臭いシステムを採用したままになっていた。

元々メタルギアシリーズは時代の最先端を行くシリーズだったと思っている。発売された各時代において、遊びの部分も技術的にも新しいことに挑戦し続け、尖りつつも革新的なゲームとして人気を博してきたはずだ。

なので、今後は同様に新しく斬新なものを目指して新作を作っていってほしいと思う。もちろん、緊迫感のあるステルスゲームとしての面白さ、反戦反核をテーマにして現実とリンクする重厚な物語、ちょっとした笑える小ネタや遊び心といったシリーズの核となる要素も残してほしい。

これからのメタルギアシリーズの続け方を考えたとき、ナンバリングの新作を作るのはかなり難しいだろう。スネークの物語は小島秀夫が軸となって紡いできたものだからだ。ゲームの舞台として1964〜2014年までの、初任務から命の終わりまでのタイムラインがすでに作られており、その間に矛盾を残さず大きなストーリーを差し込む余裕がもうないと思う。仮に作っても小島監督の脚本じゃないといわゆる正史には結局なり得ない。

これまでの作品を全部リメイクし直すという選択肢もあるが、リメイク完了までに10〜20年とか掛かるだろうし、順番にリメイクしていく過程で結局以前のものが古くなったりもする。そもそもリメイクだと原作の良かったところが削れたり余計な要素が増えたりすることもあり、リメイクで必ずしも良くなるとは限らない


ならばいっそ、まったく別のシリーズとして一からやり直せばいいのではないか、と思う。

つまり、メタルギアソリッドではない新たなメタルギア〇〇シリーズを作り、これまでの主人公スネークとは別の主人公を用意し、根幹となる要素だけ残したままストーリーをリセットして一から作っていくという選択肢。端的に言えばリブートのような、またはパラレルワールドのような感じで、新たにゼロからシリーズを作っていくこともありなんじゃないか。

(これまでは基本的に「メタルギアソリッド」が本編シリーズの名称であり、外伝として「メタルギアアシッド」「メタルギアライジング」「メタルギアサヴァイブ」などが存在する。)

そうすれば、これまでの歴史や主人公スネークの物語は一つの歴史として残しつつも、個人に依存しない会社のIPとしてのメタルギアシリーズを今後いくらでも作っていける土台ができる。また、小島監督のメタルギアとは違う角度の作品を作っても「小島監督のメタルギア」を汚したことにはなりにくい。

実際、本編中に出てくる雷電というキャラを主人公にしたスピンオフ「メタルギアライジング」は、ステルス要素はありつつも基本は斬撃によるスタイリッシュアクションであり、本編のメタルギアシリーズでは出てこないであろう設定やキャラがふんだんに盛り込まれていたものの「メタルギアじゃない」というようなことはあんまり言われてなかった記憶がある。

そうやってどんどん新しいことを続けていけば、やがてそれは一つの伝統となり得る


ちなみに小島監督本人も、しばしば「次の世代にメタルギアを託したい」と述べていた。個人的にも、メタルギアから離れて次々と独創的なゲームを作っている小島監督に、またメタルギアを作らせるのは少々もったいない気持ちもある。とは言いつつ結局メタルギアの精神的続編を作ってるみたいなので複雑な気持ちではあるが……


ともあれ、メタルギアシリーズが今後もずっと続いてシリーズとしてもっともっと人気になっていってほしい。

まずは8月に発売されるマスターコレクション Vol.2を楽しみに待とうと思う。